短期滞在なので、レストラン選びで後悔したくない。夜のレストランは、このWebサイトを参考にして、あらかじめ目星をつけておいた。
Les restaurants de Sion (フランス語)
http://www.bonnes-adresses-valais.ch/bonnes%20adresses%202005/sion.htm
第一希望は、ヴァレー州の郷土料理(Cuisine Valaisanne キュイジーヌ・ヴァレサンヌ)が食べられるというLa Pinte Contheysanne を考えていたが、今晩は休みだった。
そこで第二希望のCafé des Châteauxにした。古い山小屋風の内装で、おばちゃんが田舎料理を出す店だ。
おばちゃんは、フランス系といっても南仏風の、黒髪で小さな背丈、ギョロっとした眼で、「ハウルの動く城」なんかに出て来そうな風貌である。
オーダーしたのは、野ウサギのリエットと、鹿の赤ワイン煮込み。

ちょっと塩気が強かったけどワインがすすむ。
一人旅するなら、現地語の料理用語を覚えていくとメニュー読みが楽だ。
野うさぎ=”Lièvre”(リエーヴル)
鹿=”Cerf”(セール)
リエット=” rillette”
赤ワイン煮込み=”civet”(シヴェ)
ほかにも、
牛肉=”boeuf”(ブフ)
仔牛=”veau”(ヴォー)
豚肉=”porc / cochon”(ポール/コション)
鶏肉=”coq”(コック)
子羊=”agneau”(アニョー)
スズキ=”bar”(バール)
イワシ=”sardine”(サルディーヌ)
舌平目=”sole”(ソール)
肉類=”viands”(ヴィアンドゥ)
魚類=”poissons”(ポワソン)
野菜=”légumes”(レギュム)
などなど。たいていの旅行会話集に載っていると思う。
さて、こうしたジビエ(獣肉)は、臭みをいかにとるかが命題なのかも知れない。しかし、この郷土料理は、野ウサギも鹿も、かなりクセがある。それがおいしい。苦手な人はいるだろうけれど、この臭みを楽しまないとつまらない。
ワインは、本当はピノノワールがよかったが、ちょっと高かったので、ガメイ種を使った軽めの赤ワインを選択。
フランスで言うと、ボジョレーのワインはガメイ種で作る。ボジョレーと同じ感じで、気軽に飲める赤ワインだ。
これをがぶがぶ飲みながら、野獣と化した私は肉に喰らいつく。
野ウサギ肉の真っ赤な色と赤ワインの色がテンションを高める。

つけあわせもおいしかった。
あっというまにふた皿の肉をたいらげた。つけあわせの栗が秋の風情を醸し出していてよかった。
気に入ったのでデザートも食べることにした。いくつかあったが「Marron(栗)」の表示がある。つけあわせにもありましたね、みたいなことを言うと、「さっきのは栗そのもの、こっちはガトー(Gateaux:ケーキ)」だという。
いきおいで頼んでみると、こんなにおしゃれなプレートが。

肉の宴のあとは、おしゃれなスイーツを。
ただし、味の方はそれほど特別な感じはしなかった。強い甘みがドンと来てお腹にこたえた。
ワインが少し余ったので、ビンを持ち帰ることにしたのに、お会計をすませて出る時にすっかり忘れてしまった。
もう一度店に入って、
「ワインのビン、忘れちゃったんですけど!」
と言うと、おばちゃんは、奥のキッチンにいるスタッフに一度目をやったものの、肩をすくめて首を横にふるばかり。もう片付けて中身は捨てちゃったらしい。おばちゃんの仕草がいかにもヨーロッパ。
「あ、いいですいいです。少ししかなかったもんね」
夜のシオン旧市街、教会がライトアップされているけれど、ギラギラしない控えめなライトがいい。丘の上には、ライトに当てられた2つの古城が不気味に浮かびあがる。その姿がこれまた美しい。
古い街を散策しながら、ゆったりとシオンの夜を満喫した。

翌日は、チーズの都・グリュイエールまで足を延ばす。明日もおいしいものが待っている。
しかし、待ちうけていたのは、良いことだけでなかったのである。